Ch. Margaux写真(ワイン) by iri2618 STOP WARS

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REVIEWS

ワインCh. Margaux(1989)
評価

2.5

味わい
ボリューム軽い
重い
タンニン控えめ
強い
甘みドライ
甘い
酸味まろやか
シャープ
果実味スパイシー
フルーティ
香り
詳細
シチュエーション
飲んだ日1998-04-10
飲んだ場所帝国ホテル「桜の間」
買った日
買った場所
購入単位
価格帯
価格
インポーターメルシャン

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iri2618 STOP WARS

1989 シャトー・マルゴー マルゴー メドック ボルドー/フランス 【備忘録】 1998/4/10(金)@帝国ホテル4F「桜の間」シャトー・マルゴー・ヴァーティカル・テイスティング 職場の引越しで、大昔に、衝動的に書いた、生まれて初めてのワインのレビューが出てきました。 その頃はvinicaもありませんし、「ワイナート」とか「「リアル・ワイン・ガイド」とかもない時代ですが、午後に体験したテイスティングが衝撃的過ぎて、その日の夜、原稿用紙に手書きで一気に書き上げたものです。 いま読み直すと、いろいろツッコミを入れたくなる文章ですが、歴史的な資料としての価値はあるかと思いますので、ここに恥とともに晒しておきます。 -------------------------------- 「幸福とは何か?」と聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか? 今から100年以上も前に、カール・マルクスの相棒として『共産党宣言』を著した、革命家にして思想家の、フリードリッヒ・エンゲルスは、この質問に対し、実に簡潔な回答を用意した。 それは、「シャトー・マルゴー1848年」というものだった。くどいようだが、100年以上前の話である。 それから1世紀の星霜を経た、1998年4月某日、極東の島国で〝失楽園ワイン〟として、知らぬ者のいないポピュラリティを獲得したシャトー・マルゴーの「垂直試飲会(ヴァーティカルテイスティング)」が開催された。 〝垂直試飲〟とは、同一銘柄のワインを、複数の収穫年(ヴィンテージ)にわたって比較試飲するもので、今回は、近年では最高といわれる1995年から始まり、以後、'94、'93、'89、'85、'83、'78年と遡る、計8ヴィンテージが対象となった。 主催者によれば、100人の定員に対して約三千人の応募があり、わずか15分で満席となってしまったそうだ。 当日、会場となった帝国ホテルの「桜の間」に集うことのできた100人は、極めて強運な人達といえるだろう。 さて、肝心のワインの話である。 シャトーの総支配人であるポール・ポンタリエ氏による的確なコメントに合わせて、各ヴィンテージ約40ccずつ供されるシャトー・マルゴーは、そのどれもが、ヴィンテージによるまったく異なった特徴を持ちながら、〝シャトー・マルゴー的〟としか形容しようのない、際立った個性を共有していた。 例えば赤いバラや黒い果実、枯れ葉や葉巻、ビターチョコレートの香りであったり、力強くしなやかな筋肉と逞しい骨格、豊かさと滑らかさのハーモニー…ひと言で言えば、〝フィネス〟のあるワイン。 ポンタリエ氏は、それを「日本庭園のように、どこかが突出してしているのではない〝伝統に基づく調和〟と呼んでいたが、要するにバランスの怪物のようなワインなのだ。 そして、その中の白眉、ハイライトといえたのは、4番目に供された’89年である。 それは、異様な光景だったに違いない。 100人のワイングラスを持った集団が、ひと口のワインをくちに含むやいなや、それ以降の数分間(おそらく5〜6分)、誰ひとりとして身動きもできず、しわぶきひとつなく、完全な沈黙を守り続けたのだから。 身動きできなかったのには理由がある。 それは、この'89年のシャトー・マルゴーが、身体の隅々、爪の先から髪の毛一本一本、細胞のひとつひとつに至るまで染み込んでいき、瞬時にして、文字通りの意味で、「総毛立つ感覚」を飲み手に味わせてしまったからだ。 身体中の細胞がざわめいている。あらゆる感覚が拡張され、自分の身体が自分でないような至上の陶酔、トリップ感。ワインとは、かくもエロティックな液体だったのか! この甘美なかぐわしさを身体の外に出すのが惜しい。 だから、口を開くな、鼻を閉じろ。呼吸すら邪魔だ! このまま余韻に浸り、身を委ねること以外に何を望む⁉︎ これが沈黙の動機だ。 この体験を共有した、この日の100人なら、冒頭の問いに、きっとこう答えるに違いない。 「真の幸福とは、シャトー・マルゴー1989年である」と。 ただ、惜しむらくは、その価格だ。 2年前なら、1万円前後で手に入れることも可能だった、’89年のシャトー・マルゴーは、現在では1本8万円を下ることはない。 幸福とは、私たちのすぐ目の前にありながら、決して触れることのできない「青い鳥」のようなものなのかもしれない。

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