ワイン | Ch. Sansonnet(1999) | ||||||||||||||||||||
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評価 | |||||||||||||||||||||
味わい |
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香り | |||||||||||||||||||||
詳細 |
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ーーーーーーーーーーーー 歩いている。 背の高い針葉樹。視界をはばむ大きな岩。湿った土を踏むと、皮靴の裏が柔らかに沈んだ。 一歩、一歩。 歩いている。 ふと視線の先に、一枚の花びらが舞い上がる。 ふわり。 どこから来たのか。 花びらは陽の光のなかひるがえった。 手を伸ばす。 白い指の隙間を、花びらが微笑みのようにすり抜けていく。 ーーそうか。これを追いかけて来たのか。 かすかな幻影に導かれるように、大きな二ツ岩を乗り越える。 ざ、と強い風が吹く。視界が広がる。一面の、青い平原。 走り出す、走り出す。 視界の端を、色とりどりの花が彩っていく。 白、青、薄い紅色。真っ赤な野いちごが、背の低い草に隠れて揺れている。 舞い上がる花びら。 ひらり、ひらり。花びらは笑うように身をよじっては、指の隙間を抜けていく。 届かない。 手を伸ばす。 届かない。 どうしてだろう? ーーわたしはどこから来て、どこに行くのだろう。 ふと我にかえると、いつの間にか花びらは消え、わたしは柔らかな草原に寝転んでいる。 ーー……夢? ざ、とあざやかな風が吹く。 鼻先をかすめる懐かしい気配。 そっと右手を開いた右手には、白い花びらがたたずんでいる。
増田 花
サン・テミリオンのグラン・クリュ、メルロー主体。99年とそれなりに寝ており、エッジが茶褐色。 ボルドーらしいボディを感じながらも、甘み、酸味、華やかさなど複雑でエレガントな香りもある。抜栓直後はアルコール感が出ていたものの、しばらくすると落ち着いてベリー系でフローラルな香りが立ってきた。 飲み口はしなやかでさらりとしており、じんわりとタンニンが広がる。香りに負けない複雑味とジューシーさ。タバコのニュアンスも残しつつ、余韻は長め。 湿気のある林道を進み、開けた草原。そこに佇む小綺麗な教会。旅の途中に立ち寄り、安心感と休息を得る。そんなイメージ。 ビーフシチューとの相性◎
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