「ゲド、このワイン、美味いぞ。」 テルーが、澄んだ瞳でグラスを傾ける。夕焼けに染まる海を背に、二人は静かに酒を酌み交わしていた。 「ああ、そうだな。シャルドネか。若木の香りがする。」 ゲドは、コトー・ブルギニョン・ブランを一口含む。緑がかった色合い、木成りの果実味、熟れてないリンゴや洋梨のニュアンス。白桃のような甘みが舌の上で踊り、檸檬の酸がそれを引き締める。蜂蜜の香りが鼻腔をくすぐり、ほんのりとしたミネラル感が余韻に残り、口の中に爽やかな清涼感をもたらす。 「まるで、君のようだな。」 ゲドの言葉に、テルーは顔を紅潮させた。 「どういう意味ですか？」 「若くて、瑞々しくて。でも、芯はしっかりしている。そう、このワインのように。」 ゲドは、グラスを傾けながら、遠い目をした。 「アレン・・・。」 彼の口から漏れたのは、かつての親友の名だった。アレンの死は、ゲドにとって深い傷跡を残していた。 「アレンも、こんなワインが好きだったろうな。」 テルーは、何も言えなかった。ただ、ゲドの肩に手を置き、静かに寄り添った。 夕焼けは、刻々と色を変え、海を茜色に染めていく。二人は、それぞれの思いを胸に、静かにワインを飲み続けた……

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